■ちくわ部 一年前。

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  「そう、ですけど……」 相手の意図が掴めずに警戒する。 少しだけたじろいだ俺に追い討ちをかけるように、もしくは安心させるように、その先輩は穏やかな声で続けた。 「ほほう。一年生はこの時期から部活見学にバリバリ行っちゃうもんだけどね」 それは担任からも言われたこと。 この学校はとにかく部活が多くて、類似した活動内容のものも少なくない。 そういった部活の中から自分の籍を落ち着けることのできるものを探すというのは、なかなか単純にはいかないのだ。 どこかに必ず所属しなくてはならないだけでなく、一度しか転部できないというオマケ付きだから余計に。 先輩は後ろ手を組みながら、ちょっとおどけたように首を傾げる。 「何か理由でも? バイトとか?」 「……いえ、特には。ただ、急がなくてもいいかな、ってとこです」 嘘はついていない。 ただ今日帰る理由としては岡野を撒くのが第一ではある。 あとは……部活動なんて、入ってしまえばどこでも大差ないと思うからだ。 活動が活発なのは面倒だしできれば楽なところがいいが…… 部活動に力を入れているこの学校のこと。どうせどこも真面目なんだろう。 できるだけ趣味に近いところを選べばそこまで苦痛にもならないはずだ。 それなら、目星くらいは付けられる。 だから今すぐ行動に起こさなくたっていい。 それより、この先輩はなんのために俺に声をかけたんだろう。 こんな時間にこんなところで、女子生徒がひとりだなんて不自然な気がする。  
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