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スポーツも文化活動も嫌いではない。
大抵のことを楽しめるのは、ある意味俺の特技だった。
ある程度できるようになれば、なんだって楽しいもの。
そして俺は、大概『ある程度』までできるようになる。
ま、なるようになるだろう。
そんなことを考えながら下駄箱で靴を履き替えていると、ぬっと人影が俺の左側に立った。
「おっ、同じクラスみたいだねぇ? ……よろしく、ちびっ子くん」
そうやって馬鹿にした笑みを残し、俺の三大コンプレックスのひとつを抉って。
憎たらしいくらい背の高いそいつはさっさと上履きを履き替えながらそれだけを言うと、風のように去っていった。
一瞬すぎたのといきなりでよくは見ていないが、もう一度会えば間違いなくわかる。
……馬鹿にしやがって!
俺は確かに背が低い。
成長期がいつかきっと来ると期待しながらも160cmの壁が砕けぬままに中学卒業。
でも、きっと、まだ望みはあるはず……!
……さっきの奴、180くらいはありそうだったな……。
むかつく気持ちが渦巻きつつも、なんとか堪えて教室に到着。
さっきのあいつは……なんと、ドアを開けてすぐの席にいた。
携帯を弄っていて、俺がすぐ後ろを通ったのにも気が付いていないらしい。
心の中で舌打ちしつつ、しかしわざわざ絡む理由もないので黒板に書かれた指定通りの席についた。
よし、あいつとは遠い。
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