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黒板の席順によると……奴は『岡野』というようだ。
俺の中でブラックリスト入りにしておく。
初対面で馬鹿にしてくる奴が良い奴なわけない。
改めて、ちらりと観察。
長めのくせっ毛はあちこちに跳ねているが、正直……顔『だけ』はいい。
しかし、ブレザーのボタンが全開なうえにシャツのボタンも第二まで開いていてネクタイは行方不明。
きっと不良だ。
絶対留年野郎だ。
一年前の頭からこんなにハズすやつなんて、ろくなもんじゃないに決まっている。
触れなければ祟りもないだろう。
……と、思ったのに。
携帯を注視していたそいつが、いきなりこっちを見た。
――視線が、ぶつかる。
その直後、奴は腹の底からムカつくにやにやとした笑いを浮かべながら立ち上がり、こっちへとやってきた。
「おはよー、さっきぶりだねぇ、ちびっ子くん」
へらへらしながら絡んでくる態度は、どれだけ好意的に見ても不愉快。
しかも座っている小柄な俺を、立ったまま見下ろしてくる長身……さらに腹が立つ。
「……なんだよ」
敵意を滲ませながら、わざときつく睨みつけた。
しかし岡野は飄々とした笑みを崩さない。
「んな睨まないでよー。イチゴイチエ、偶然を大事にするの、俺」
要するに、下駄箱で偶然出くわした時点で運の尽きだったらしい。
ならそのときもっとまともな絡み方があっただろうが。
俺の睨みなどまるで効いていないようで、それもなんだかムカついた。
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