32人が本棚に入れています
本棚に追加
「下は?」
「ヒナミ。太『陽』で『菜』っぱの果『実』で、陽菜実」
俺を無視したまま俺を挟んで、岡野と小鳥遊は会話を弾ませる。
もう俺に構う気がないなら、さっさとどこかに消えてほしいもんだ。
「うわぉ、随分と鳥っぽくてフルーティな名前だねぇ……んじゃ、『ぴよっち』ね」
「なにそれ?」
「あだ名だよ、あだ名ー。俺のことも『ジン』でいいよ」
会って数分であだ名命名にとどまらず、自分のことも名前呼び推奨とは。
いくら小鳥遊が男っぽくても女子は女子だ。
この岡野って奴、軽い男のオーラが凄まじい……いや、実際かなり軽いと思う。
踏むべき段階を簡略化して、小鳥遊と急接近を目論んでいるようにしか見えない。
……しかし。
「オッケー。じゃ、うちもあんたのことはジンって呼ぶね」
こいつも、同じか……
珍しい制服目当てで入学する奴もいるらしいこの学校のことだ。
こいつらみたいに、どこか『軽い』生徒が多いのかもしれない。
まともな奴を見つけないと……
岡野や小鳥遊に絡まれ続けていれば、まともな奴が離れていき、せっかくの高校三年間を棒に振る羽目になるだろう。
だからさっさと離れて、俺は俺で自分の望む生活を手に入れるために行動すべきなのだ。
そうは言っても、今は俺の席を挟まれてしまっている状態。
辺りを見回せば、各々席の近い奴らと話していたりする。
……詰んだ。
最初のコメントを投稿しよう!