■ちくわ部 一年前。

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  「下は?」 「ヒナミ。太『陽』で『菜』っぱの果『実』で、陽菜実」 俺を無視したまま俺を挟んで、岡野と小鳥遊は会話を弾ませる。 もう俺に構う気がないなら、さっさとどこかに消えてほしいもんだ。 「うわぉ、随分と鳥っぽくてフルーティな名前だねぇ……んじゃ、『ぴよっち』ね」 「なにそれ?」 「あだ名だよ、あだ名ー。俺のことも『ジン』でいいよ」 会って数分であだ名命名にとどまらず、自分のことも名前呼び推奨とは。 いくら小鳥遊が男っぽくても女子は女子だ。 この岡野って奴、軽い男のオーラが凄まじい……いや、実際かなり軽いと思う。 踏むべき段階を簡略化して、小鳥遊と急接近を目論んでいるようにしか見えない。 ……しかし。 「オッケー。じゃ、うちもあんたのことはジンって呼ぶね」 こいつも、同じか…… 珍しい制服目当てで入学する奴もいるらしいこの学校のことだ。 こいつらみたいに、どこか『軽い』生徒が多いのかもしれない。 まともな奴を見つけないと…… 岡野や小鳥遊に絡まれ続けていれば、まともな奴が離れていき、せっかくの高校三年間を棒に振る羽目になるだろう。 だからさっさと離れて、俺は俺で自分の望む生活を手に入れるために行動すべきなのだ。 そうは言っても、今は俺の席を挟まれてしまっている状態。 辺りを見回せば、各々席の近い奴らと話していたりする。 ……詰んだ。  
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