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「桜餅か、懐かしいな」 機嫌を悪くして膨れていると小さく低い声が聞こえた。 「懐かしい……」 懐かしい、という感情とはどういうものなのだろうか。私にはない。記憶が朧気でなんとなく母と父の顔が浮かぶだけで。 「栗」 「うへ?」 「桜餅が可哀想なことになってるぞ」 あ、またやってしまった。 今作っていた桜餅が歪な形になってしまっていた。 意識がお留守になるとこうなってしまうのだ。
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