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それから犬の世話は大変だと改めて知ることになるのだった。
「なあ、栗(くり)」
「栗(りつ)です」
毎日毎日こんな会話が習慣化しているのもどうかと思う。
「李(すもも)さんって年下好――」
「嫌いです」
私が勝手に拾ってきたとはいえ叔母さんに手を出したら絶対に許さないから。
「なあ、まろん」
「栗です」
「毎日付けてくれる和菓子って誰が作ってくれているのか?」
「私ですが何か」
「いや……器用だなと」
どうやら本当に感心してくれているようだ……見えるだけかもしれないけれど。
彼は和菓子(今日は大福)を一口食べ何か考えているかのように眉間に皺を寄せていた。
「不味いなら不味いって言ってくれて構いませんが」
「いや、美味しい」
びっくりして何を言われたのか直ぐには認識出来なかった。やはり人の子。
「それは……有り難――」
「特にこの味噌汁が」
「……」
前言撤回。
なんて嫌な奴なんだろうか。私のトキメキを返せ。
「大丈夫、大福も美味しいから」
「完全にオマケな存在として認知しやがりなさって何が大丈夫なのですか全国の大福に謝って下さい」
銀髪の寝癖なのか普通に癖毛なのか分からない髪を掻きあげて
「拗ねた?」
「拗ねてません!」
なかなか彼はなつかないのだ。そればかりか元気になるにつれて私を事も無げにからかい……死語ながらSというやつなのでしょうか。
「なあ、栗(りつ)」
「栗(くり)です!」
「…………」
間違えた。
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