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「いってきます」 すると二階から叔母さんが降りてきた。 「あ、栗ちゃん、短銃は持った? 銃声が近くで聞こえたら荷物を捨ててでも逃げなさいよ あと――」 「大丈夫よ、ではいってきます」 食料云々は買いにいかなくてはならない。見知らぬ家まで届けてくれる命知らずな奴はもういない。そして今日は私の当番なのだ。 銃声は遠くでひっきりなしに聞こえてくる。今日も誰かが撃たれて死んじゃうのだろうな。可哀想に。 そんなことを思って歩いていると狭い路地から黒猫が出てきた。にゃあと一声。 わあ、可愛い。久々に猫なんか見た気がする。前に見たのは――いつだったかな。 また一声。 その時大きな音が鳴り響いた。同時に自分の体内のサイレンが鳴り始めた。やばい、これは近い。 猫が出てきた狭く暗い路地に入る。 基本的、ここは治安は良いはずだったのだが。この土地で発砲する輩はいないはずだったのだが。街のバリケードのおかげで。 自分の足音がやたら大きく聞こえた。しかし追ってが来る気配がない 薄暗い路地裏で一人胸を撫で下ろした刹那、悲鳴が喉から出そうになったのを堪えた。 暗くてよく見えないが人が壁に背中を預けて座り込んでいた。顔を俯けているが大体体格からして男性のように見える。 「――逃げろ」 程好いバスの小さな声色が聞こえた。追っ手がくる気配も無いが自分の身を案じて逃げることが得策だろう。しかしこのまま置いてしまうとこの人は多分……死ぬ。息も絶え絶えとしているし何より動けない。 そう思考が動く前に体が先に始動していた。 彼に腕を回した時にべっとりとした感触がした。 ああ、血糊だ。 早く手当てしないと。 「逃げろ……と……言った……だろう」 「喋ると傷が開きますよ」 重い。けれど男性一人運べない程私はか弱くはなかった。 店はそう遠くない。 大丈夫。 と言い聞かせて私は材料の代わりに重傷の人間一人持ち帰った。
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