封筒

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「何だ?こんな時間に…」 時計を見ると七時を回っている。 「お使いよ、お使い。開けてくれる?」 「はいはい…」 チェーンを外してドアを開ける。 「はい。お母さんが作りすぎたからどうぞって」 差し出されたタッパーにはポテトサラダが入っている。 しかもかなり重い…。 「作りすぎたとかいう量じゃない気がするけど…まぁいいか。おばさんにお礼言っといてくれよ」 「分かった。あ、それとコレ」 紗季はタッパーの上に封筒を置いた。 封筒とは言っても、書類を入れるような大きな封筒。 「何だコレ…誰からだ?」 「さあ…ポストに入ってたから」 「人の家のポスト勝手に漁るなよ…」 強烈な視線…。 紗季は帰る素振りもせず、じーっと封筒を見ている。 「…何だよ」 「気になる…」 紗季は昔から好奇心が強い。 言うなれば典型的なお節介。 「ねね、開けてみてよ」 「はあ?父さんか母さんの物だったらどうするんだよ…」 両親宛の荷物は時々この家にも来た。 仕事関係の書類なら勝手に開けるわけにはいかない。 「でも『ヤシロマサタカ様へ』って書いてるわよ」 封筒の端に確かに書かれている。 八城昌孝…確かに俺の名前だ。 父さんが雅樹、母さんは真希なので間違いようがない。 「俺宛…?最近面接は受けてないんだけどな」 紗季は尚も視線を外さない。 こうなっては誰も止められない。 「分かった…じゃあリビングで確かめよう」 「やた。じゃ、お邪魔しま~す」 勝手知ったる何とやら……紗季は悠々とリビングへ上がり込んだ。
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