孤独

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「ごめんね。…新(あらた)。そんな体に生んでしまって。」 母さんは、死んでいく間際まで誰のせいでもないのに俺に謝り続けた。 床に臥す母さんは、横に座っている俺の前髪を掻き上げ、顔がよく見えるようにした。 いつの間にか、涙が幾度となく、頬を伝っては膝に落ちた。 その痕を母さんは指先で何度も拭ってくれては、また 「ごめんね」 と言った。 「お父さんのことは、許してあげて。」 父さんは、17年前に死んだ。72歳だったし、体力もないときに肺炎に罹ってしまったのが原因だ。母さんも、もうすぐ80歳だ。もう十分すぎるくらい、俺のために頑張ってくれた。許すも何もなかった。俺が大人になるまで生きていて欲しかった。唯それだけでよかった。本当はもっと早く見せてあげられたはずだったのに…。まだ当分は子供で居なくてはならないなんて…。 そして、俺は一人になった。時々、親戚と名乗る大人たちがそんな俺を引き取ろうとした。  皆俺より年下なのに俺のほうが弱い子供だ。 けれど俺はそのたび、逃げ出した。もう誰かを失いたくなかったんだ。 一人でも生きていける。 『俺はもう、ずっと前から子供じゃないんだ。』
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