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「…さん!新さんっ。あーらーたーさん?」
だんだん、俺を呼んでいるのが分かってきたとき、横から女の子が顔を覗き込んできた。
「あれー浮かない顔して、どうしたんですかぁ?」
「え?」
この子は誰だったかと、暫く考えていると、女の子は早口で
「悩み事があるなら言ってくださいよー?」
と笑顔でそう言った。
「どうして?」
「それは、あったりまえだよー!!」
女の子は突然、両手に力を込めてこう言った。
「だってー、私は新さんの彼女ですもん!!」
若干、俺と少し離れたところに座る女の子は…そう確か、石埼千桜(いしざき ちお)…。
しかし
「俺は君の彼氏じゃない。」
それを聞いた千桜は、木製のベンチの板を両手でバンと叩くと、かなりショックだったのか大声で
「えーっそんなー!もう三ヶ月も一緒に居るのにぃ。」
と呆れる俺の表情が見えているのか、勝手なことを言う。
「ついて来ているのは君のほうじゃないか。俺は認めてない。」
そう言ってやると、多少しょんぼりした顔をしたが、すぐにまた明るい顔を作った。
「じゃあ、どうしたら認めてくれるの?」
セミロングの髪で、白いブラウスに紺色のスカート、首元にはそれに合わせた紐状のリボンを結んでいる。きっと何処かの、良家のお嬢さんかと思われる。
しかし、なんと言うか考え方は9つか10の子供のようだ。我儘で親を困らせるタイプだ。
「君は家に帰らなくていいのか?両親が居るんだろう?もうじき夕方になる。近くまで送っていってやるから。」
「やっぱり新さんも同じこと言うんだ…。」
「は?」
「新さんは、年上だけど、私と同じ子供だと思ってたのに。」
「…もういい加減にしないか。俺のことをやたら恋人にするのは。」
俺は次第にイライラしてきた。
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