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「どうして?」
「どうせ、家でもそんなだから兄弟や親からもかまってもらえなくて、家出したんだろ?…で、たまたま体のいいところに俺が居て、相手になって欲しかったんだろ?」
「違うよ。」
千桜は否定する。
「俺は恋人のフリになっただけ。」
「フリじゃないもん。私、新さんのこと大好きだもん。」
千桜は立ち上がった。まただ。平気で人のことを好きだと言う。俺には理解出来ない。
「俺は彼女は要らない。誰も…何も要らない。」
しかし、きっと彼女はこの程度では諦めない。
「年が離れ過ぎているから?あ、それともどこか悪いところ…。」
千桜は、俺が嫌う理由を考えて、例を挙げ始めた。
「違う」
「あ、じゃあ髪型も変えるし、服ももっと可愛いの着るし、それに我儘も言わない…。」
「違う!」
「新さん…。」
「察しろよ!君もすぐに俺の前から居なくなるくせに!!」
そんなこと言うつもりはなかった。言ってもどうしようもないことだと分かっていたのに。俺は、千桜の肩にぶつかりながら、無理にそこから立ち去った。
千桜は誰も座っていないベンチに向かって立ちすくんでいた。
「そんな…。」
言葉を出してみて、振り返った。けれど、もう新の姿は見えない。
「そんなの…悲しすぎるよ。新さん!」
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