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訳あって彼女はこの家に一緒に住んでいるのだけども、普段はこんな表情はしない。
近隣の高校の制服を着ているのだが、俺達と年月が違うのだ。
ーー生きてきた年数が。
なので常に冷静であり、自分に絶対の自信をもっている。
まさに博識なる賢者のように。
だから、彼女の困った顔など俺は一度しか見たことが無い。
「どうしたんだ紅……」
彼女の名前を呼ぼうとしたときだ。
チラッと見えてしまった。
彼女の後ろにいるものを。
そう、それは今一番俺が見たくないものだった。
「あの……そのだな……この姿で華恋に会うのは初めてだったから……」
華恋。
それは彼女の後ろにいる人物。
ーーそれは俺の、
「兄ぃぃぃぃさぁぁぁぁぁん! 私がいない間に」
妹だった。
あぁ、天国のママンこんな時どうすれば……。
「何、家庭築いてんだぁぁぁぁ!」
「まっ待て、我が妹ーー」
弁明の余地無く、華恋の容赦ない跳び蹴りが頭に炸裂し、俺の意識はそこで途切れた。
すべての始まりは一ヶ月前に遡る。
それは彼女達とーー。
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