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「…何で知ってんの?」 「人をストーカー見るような目で見ないでよ、調べたのは私じゃない。 うちの会社のお姉さま方がよく騒いでるのよ、下の階の商社の工藤さん素敵!ってね。 ファンによると、アンニュイな雰囲気がたまらない、らしいよ。」 「…そりゃどーも。」 アンニュイかどうかは知らないが、すぐ上の広告会社の事務の女に食事に誘われたことがあった。 面倒だったから丁重にお断りした記憶がある。 「あれ、いまいちな反応。別にモテても嬉しくない?」 定食に付いている味噌汁を飲みながら、 彩羽はさして興味もなさそうな顔をして尋ねた。 「あんまり、かな。 めんどくさいし。」 「ふーん。」 箸を止め、斜め下あたりをふっと見つめる。 それはほんの一瞬のことで、彩羽はすぐにこちらに笑顔を向けた。
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