1001人が本棚に入れています
本棚に追加
その後も、その本気の練習は続き、練習開始から5時間、ようやくキャッチャーが決勝戦と言った。
子ども達の声は、全員がしゃがれ声となっている。
走るスピードも、ずいぶん落ちた。
私は、バットを降り続けているため、腰がパンパンに張り、もう限界だった。
そして、握り続けている左手は、マメはとっくに潰れて、痛みに負けぬよう力いっぱいバットを握り続けた結果、開かなくなっていた。
それでも、決勝戦の響きに全員が奮い立ち、元気を取り戻した。
もちろん、体のキレはもうないが…
6時間を経過しようとした時、最後のアウトを取った瞬間、私を含め全員がグランドにひれ伏した。
その後集合した時、まだ13歳の子ども達が、大人の顔つきで集まってきた。
この顔付き、写真に撮りたい衝動に駆られた。
そして、ミーティングを始めた。
「おまえら、今日の本気、卒業までやり続けろよ!」
「はい!!」
「以上、解散。お疲れさん!」
印象に残したかったので、たった一言、精一杯格好つけて言って振り返り歩き出した。
すると、選手に声を掛けられた。
「コーチ!!手…」
私の手から、ポタポタと血が落ちていた。
背中を向け、血の出る左を「お疲れ!」というように挙げ、黙々と家路につこうとした。
「うわぁ、格好いい。」って声を、丸聞こえだってと思いながら…
これが、この子ども達の担当として最後の練習となった。
伝わったかな?
『本当の本気』
最初のコメントを投稿しよう!