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「お嬢さんは名前は?」
船の中を探険していると、若い女の人がサラに名前を聞いてきました。
「私はサラよ。あなたは?」
サラも名前を聞きました。
「私はドリス」
ドリスは、お茶でもいかが?とサラを船室へ案内しました。
「あなた、絵に興味があって?」
「描くのは好きよ。」
サラの答えに、まあ!とドリスは目を細めました。
「気が合いそうだわ。」
ドリスは体が細く柳のよう。細い腕で紅茶を注ぐと、とても優雅な動きでサラに渡しました。
「お砂糖が必要かしら?」
サラは角砂糖を2個貰いました。
「私、これから大都会でたくさん絵を描くの。家が貧しいから、家族の暮らしの助けになりたくて。」
ドリスは、急に話し始めました。
「あなたには夢があって?」
サラは首を振って小さく、まだ。と答えました。
「だったら、絵描きになることを勧めるわ。」
紅茶を全部飲み干すと、静かにカップをテーブルに置きました。
「これをあなたにあげるわ。」
サラは、マホガニーの柄で出来た真新しい筆と、銀色の箱に入った、これもまた新しい絵の具を貰いました。
「新しい暮らしで、絵を描くといいわ。新しい家や、これから住む島の風景…。今、友達と別れたばかりでつらくても、すぐに慣れるわ。好きになれるはずよ。」
ドリスは、港でのサラのことを見ていたのです。
「ありがとう。」
「絵を描くのは、不思議なおまじないよ。気が紛れたり、楽しくなるの。私も本当は、大都会は初めてで不安でいっぱい。でも、私には絵があるから大丈夫なの。」
そう言って、ドリスはサラを元気付けました。
「私、絵を描くわ。いつでも。そして、ドリスおねえさんのこと忘れないわ!」
汽笛が聞こえました。
「港に着いたみたい。私はここで降りるの。あなたは、まだ船を探険するのかしら?」
サラは少し照れたように頷きました。
「この船には、いい人ばかり乗ってるわ。素敵な出会いがあることを祈って…。」
ドリスはサラにお別れのキスをしました。
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