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サラは、甲板まで行きドリスを見送りました。 港はたくさんの人だかり。 遠くでは、忙しそうに走る馬車や、何かのお祭りがあっているのが見えます。 今までいた街でも見たことがない綺麗な窓の大聖堂。 豪華なドレスに傘を差してあるく女の人。気取って杖を振る、蝶ネクタイをした紳士。 サラも生まれて初めて見る大都会でした。 「ありがとう!ありがとう!」 サラは、街の喧騒に負けないように大きな声で手を振りました。 ドリスも細い腕が折れそうなほどサラに笑顔で手を振りました。 キャンバス、イーゼル。トランクにたくさんの紙袋。 その体のどこにそれだけ運べる力があるのか、サラにはとても不思議でした。 汽笛が鳴りました。 出航です。 ゆっくり、しかし徐々に港から船は遠ざかりました。人込みに紛れて、もうドリスの姿は見えません。 サラは船の中に戻りました。
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