運命の歯車

2/8
前へ
/15ページ
次へ
ある夏の雨の日。 いつものようにバイトを終えた俺は、独り暮らしのボロアパートの階段を昇っていた。 今日も店長にしごかれて、疲れていた。 早く布団に入って寝たかった。 が、そこに俺の部屋はなかった。 玄関の外に荷物がすべて置いてあり、 “佐坂春樹    家賃停滞” と書かれた貼り紙がしてある。 あぁ、ついにきたか。 俺はろくな仕事にも就けず家賃を停滞しっぱなしだったから、いつかくるだろうとは思っていた。 でも、覚悟していた割には正直キツい。 これから行く宛もないし、俺はどうすればいいんだろう? とにかくここにいるのも辛いから、俺は段ボールを抱えてアパートを後にした。 路頭に迷いながらふと目に留まったのは、河原。 地面が芝になっていて柔らかそうだったし、橋の下なら雨が凌げると考え、俺は取り敢えずそこで一晩を過ごすことに決めた。 ―今思えばこの時、既に俺たちの運命は動き始めていたんだ…。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加