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私は、車からあるものを見てしまった。
―橋の下で寝ている人の姿。
遠くからでよく見えないけど、丸まって寝ている。
雨が降っているし、寒いんだろうな…。
私は見ていられなくなって、運転手の多賀さんに車を止めてもらった。
「珠理様…、」
と引き留めようとする和を無視して、私は走った。
河原の階段を駆け降りると、すぐそこに彼は寝ていた。
―綺麗だ。
私は瞬間的にそう思った。
いや、誰が見てもそう思っただろう。
がっしりとした男性らしい肩、
すらりと通った鼻筋、
どこか色っぽさを感じる唇。
…って、いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。
彼はびしょ濡れで、震えながら寝ている。
…何とかしてあげなきゃ…。
私は、考えるより先に行動していた。
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