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氷莉は陰陽師の仕事を始めてから様々なものと戦ってきた。
悪霊や死霊、鬼や妖怪などの魑魅魍魎だ。
それらを全て調伏して来た自分の腕にも自信がある。
人々を救ってきた戦いは常に命懸けだった。
その経験からだろう。
生半可な敵には後れをとらない自信が。
ただ、その自信が仇となった。
目の前の少年の強さを見誤ったのは。
少年に向かって呪符帯を放つ。
無数の呪符圏に包まれた相手は、それに絡めとられて一瞬で爆散する。
大盤振る舞いの使用方法だが、アビスに危険対象として一番に上げられた少年だ。
油断は出来ない。
その呪符が散る前に、ガルンの刀から水の波が生まれる。
津波の様に押し寄せる水によって、呪符は一瞬に飲み込まれた。
唖然とそれを見送る。
呪符の弱点は水で書き込んだ呪印が消える事だ。
ここまで見事に消されると驚くしかない。
氷莉は気を取り直して鉄扇を取り出した。
新たな呪術を発動させるために、空中に印を切る。
その前に一瞬でガルンが現れた。
「へっ?」
硬直する体は恐怖からくるものであろう。
ガルンはアビスに炎の壁で牽制した後、なんと一条の護衛を捨てて氷莉を潰しに動いたのだ。
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