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X県X町。
辺りを山に囲まれた小さな盆地に作られた小規模なその町に、ひとつの高校がある。
「私立神治(かみち)学園」
五つの校舎と体育館、武道場、五十メートルの屋内プールに陸上競技場にもなる校庭、さらには十を超える寄宿舎など、幾つもの建物が彼処に点在している。
私立の高校といえども、かなりの敷地と建物を有する学校である。
そんな学園の中心に、一際高く聳える一棟の塔が存在する。チェスのルークの駒に似たその塔は、白一色。純白の壁は太陽の光をまぶしく反射させる。
高さ二十メートルはくだらないこの塔についた窓は、頂上付近にある一つだけ。
そこは、この学園最高責任者にして経営者である学園長の部屋であった。
普段はあけられる事のない「開かずの窓」。だがしかし、今は全てを受け入れるかのごとく全開にひらいていた。
すると突然、その窓の内側、つまりは部屋の中から、一人の人間が飛び出してきた。
持ち物は何もない。生身一つで、地上二十メートルの高さからダイブしたのである。
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