とあるひとつの出来事

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しかし驚きは、この後の出来事であった。 二十メートルもの高さを猛スピードで落下したその人物はなんと、落下の途中でその姿を消した。 そして次の瞬間には、何故か塔から数メートル離れた地面を、何事もなかったかのように歩いていた。 頭の先から足元まである長い白コートが、その正体を影の奥に隠している。 するとおもむろに、その人物はポケットから携帯電話を取り出した。今時珍しい、折り畳み式である。 そこに、抜群のタイミングで着信があった。激しいハードロックの楽曲が響き渡る。 「もしもし」 白コートが、電話に出る。 深い影の奥から聞こえてきたのは、低めの女の声だった。 「はい、"例のもの"は手にいれました。ええ、ミヤビの『絶対侵入』(パーフェクトハック)は、さすがというべきですね。多少時間はかかりましたが、最深部まで潜り込めました」 白コートの女は携帯を片手に、懐から一枚の紙を取りだした。 A4サイズの履歴書のようなものである。 「はい、間違いありません。まだ覚醒前のようですが、可能性は高いかと。」
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