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微かな薬品の匂いが鼻腔を刺激し、眠っていた意識が暗闇からゆっくりと浮上した。
同時、輪の瞳が開かれる。
目を開けると、目の前に真っ白な天井が飛び込んできた。
白く清潔な見覚えのない天井。
周りを見渡すと、ぐるりと白いカーテンによって囲まれている。
輪は額に手をやった。
痛みや不快感は残っていない。
むしろ、スッキリとした心地良い感覚だ。
横たわっているフカフカのベッドは丁度いいぐあいに背中を押してくれる。いいベッドなのだろうと、くだらない考えも浮かんだ。
その時ふと、カーテンの外側から話し声が聞こえた気がして、輪は耳をすました。
どうやら女の人が二人、立ち話をしているようだ。
「彼は目覚めた?」
「いえ、まだ。少しすれば意識も戻ると思います」
質問を投げかけた声は高音の通る声。聞いたことのある声だ。
もう一人の方は聞いたことはないが可愛らしい声であった。
どうやら、輪の事を話しているらしい。輪は聞き耳を立てる。
「いったい何が?」
「どうやら"修正"に一部欠落があったようです」
「欠落?」
「はい。そのせいで不合理的な空白が生じてオーバーヒートを起こしたみたいですね」
二人が喋っている話の内容の九割は理解できなかった。
単語単語はわかる。しかし、それがいったい何に関連したワードなのかがわからない。
輪に関係したことだと思ったのだが、違うのだろうか。
輪は聞き漏らさないようより注意深く二人の話に耳を傾ける。
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