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「ああ、意味がわからないだろうね。だが焦らずともいずれわかる事だ。なぜなら、ここは秘密を暴こうとしている者たちで溢れているんだからね」
「あんたいったい……」
「さっきも言ったじゃないか、私は人間間人。君の優しい先輩さ」
そう言って人間間人は笑った。
初めてみせた優しげな笑顔。
ああ、確かに女の人なのだと思った時だった。
ガチャリと、カーテンの奥で扉の開く音がした。
そして足音が近づき、目の前の純白のカーテンがめくられた。
レールにそってカーテン掛けが転がり、ジャラジャラという音が部屋に響く。
「あら、起きてたのね~!」
カーテンの先には、この部屋と同じ白の白衣に身を包んだ小柄な女性がいた。
くりくりの大きな目に、小さめの鼻。髪はほんのりと茶色がかったボブカット。こんな女子大生がいたら周りの男子からモテモテ間違いないなしである。
だが、声からして先程カーテンの外で話していた二人の女性の内、可愛らしい声のほうであるようだった。つまりは、先生ということになる。
「いつ気が付いたの?ごめんなさいね、一人にしてしまって」
「え?」
驚いて振り返った先にはあの女性、人間間人はいなかった。現れた時同様、音も気配なく消えていた。
「……?」
白衣を着た女性は不思議そうに首をかしげる。
「あ、いや、なんでもありません」
「そう。あ、私は黄泉国円珠(よもつぐに えんじゅ)。保険教諭よ、よろしくね」
にこやかな笑顔で挨拶をする黄泉国に、輪は心揺らぐ。こんな保険教諭なんて反則である。
軽賀崎といい、黄泉国といいなんともレベルの高い女教師達である。これは今後も期待できるかもしれない。
だがそんなある種晴れやかな気持ちとは裏腹に、輪の脳裏には人間間人という存在がチラついていた。
(挿絵提供:三毛猫さま)
黄泉国教諭
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