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「なんじゃ、こりゃあ」
六道輪は、神治学園を前にして、昭和の刑事ドラマのワンシーンのようなセリフを吐いた。
だが、彼が驚くのも無理はない。まさに、その学園は規格外の広さを誇っていた。
まず、その正門である。
高さ六メートル弱、幅二十メートルの門扉は、学園の正面を頑なに守っている。その中央には、二つの扉でちょうど二分されるように、学園の校章にも描かれる天秤の紋章が掲げられていた。
さらに驚くはその奥。
幅二十メートルはあろう道が、はるか奥まで続いている。ここからは距離があるせいか、建物はその殆どが、道の脇に植えられた植樹に隠れていた。
唖然。
前から「でかい」ということは聞いていたが、ここまでは予想できなかった。
開いた口が塞がらないとはこの事である。
「おいおい、マジかよ」
呆然と口を開け、立ち尽くす輪。
別段カッコいいとか、美形であるとかいうわけでもない。中の中。どこにでもいる、その表現が最もしっくりくる少年は、巨大な門に圧倒されていた。
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