転校初日

2/45
前へ
/274ページ
次へ
1/1 「なんじゃ、こりゃあ」 六道輪は、神治学園を前にして、昭和の刑事ドラマのワンシーンのようなセリフを吐いた。 だが、彼が驚くのも無理はない。まさに、その学園は規格外の広さを誇っていた。 まず、その正門である。 高さ六メートル弱、幅二十メートルの門扉は、学園の正面を頑なに守っている。その中央には、二つの扉でちょうど二分されるように、学園の校章にも描かれる天秤の紋章が掲げられていた。 さらに驚くはその奥。 幅二十メートルはあろう道が、はるか奥まで続いている。ここからは距離があるせいか、建物はその殆どが、道の脇に植えられた植樹に隠れていた。 唖然。 前から「でかい」ということは聞いていたが、ここまでは予想できなかった。 開いた口が塞がらないとはこの事である。 「おいおい、マジかよ」 呆然と口を開け、立ち尽くす輪。 別段カッコいいとか、美形であるとかいうわけでもない。中の中。どこにでもいる、その表現が最もしっくりくる少年は、巨大な門に圧倒されていた。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

283人が本棚に入れています
本棚に追加