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「君が、六道輪くんね」
茫然としたまま門を見上げていた輪の背後から、誰かが声をかけてきた。
輪は驚いて振り返る。
そこには、背の高い女性が立っていた。
身長は、輪よりもすこし高い170程度。
スラリとした長い足は、身体の半分以上を占めているようにも見える。
腰まで伸びた艶やかな髪は、混じり気のない黒である。
スッとした厳しめの目に、通った鼻。縦に長く締まった骨格は、かわいい、というよりは美人に分類されるだろう。
そんな美人にいきなり名前を呼ばれ、本気で動揺する輪。
年頃の高校生男子は、美人には弱いのである。
「六道輪くん、じゃなかったかしら?」
輪が見惚れている間、棒立ちになっていたからだろう。その女性は、首をかしげながら、輪の名前を確認する。
その仕草がまたなんともいえず美しいのは、目の錯覚ではない。
ところどころに、作法的な動きが混じっているのだ。もしかしたらどこかで作法を習っていたのかもしれない。
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