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凛は、怒りながら、笑いながら、くの字で横たわる雅人の近くに軸足を踏み込んで、右足を振る。
「男なんて、大っっきら――――」
しかし、蹴りは腹に届かず、雅人の両手でガッチリと捕まれた。
「っ!?」
「ぜぇ……はぁ……凛、どうした? 手加減してんのか? いや、蹴ってっから『足加減』か?」
雅人はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「なっ……この……離れろ!」
凛が勢いよく蹴り上げると、その力を利用して雅人は立ち上がった。
「っとぉ! ……あぁ、普段からボコられ慣れてっから、こんなん全っ然ヨユーだぜぇぇぇえっ!」
満身創痍で、脂汗をかいて、息を切らしながらも、両足を踏み締めて立ち続ける。
顔は青ざめてフラフラのはずなのに、雅人の目は不滅の意志と、全てを受け入れる広大な海のような優しさにあふれていた。
一方、凛の目には、理解できないとばかりに動揺が現れていた。
「なんだよ………何なんだよ! てめぇのその目は!」
――――今まで、男からそんな目で見て貰えたことなんてなかったのに。
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