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雅人はきょとんとする陽菜から手を離し、「えーと」と頬をかきながら、
「俺はこうするの好きだけど、陽菜ちゃんはどうなのかなと思って。俺一人が良ければいいものじゃないからさ」
陽菜は笑顔の、しかしどこか不安げな雅人の顔を見る。
さっきまで手が置かれていた箇所が外気に触れて、陽菜は雅人の手の重みと温度の喪失を感じずにはいられない。
この感情は――――
「えと、んと……頭を撫でられることっていうよりも……」
雅人の問いに答えようと、陽菜は目を泳がせながら自分の言葉を探し出した。
そして雅人から頭二つ分ほど低い位置から、
「……お兄ちゃんに撫でられるのが、好き、です」
「…………」
珍しく雅人の顔が真っ赤に染まり、後ろにバタリと倒れそうになったところで、陽菜は事の重大さに気づく。
「ふぁ!? ぅあぁああああぁわわわわ陽菜は何を言っているのでしょうかあああの! その、今のは忘れて下さいっ!」
「うん、それ無理。脳内ハードディスクに永久保存した」
「ダメ! ダメダメダメですっ!」
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