1838人が本棚に入れています
本棚に追加
陽菜は本来病的に白い頬を紅潮させ、瞳をうるませて盛大にテンパった表情を見せる。
我を忘れて手を必死にぶんぶん振る陽菜を、雅人は目に入れてもいたくないとばかりに優しく見つめて再び頭の上に手を乗せる。
――――と。
「差し出がましいようですが御主人様、不純異性交遊は慎み下さいませ」
「!?」
いつから見ていたのか、雅人と陽菜が二人の世界に没入している間に接近していたイブキに、雅人は不意打ちのように手首を掴まれる。
その細い指から想像できないような握力で掴まれ、手首の骨はやめて折らないでとばかりにギシリと悲鳴を上げた。
そして凛もいたようで、陽菜の身の安全を確保してから「まったく油断も隙もありゃしない」とぶつぶつ文句を垂れていた。
イブキの眼鏡の奥では切れ長の目が鋭く光る。
しかし雅人は全く怯まず「ははは」といつもの憎めない笑顔で返す。
「参りましたね。その眼鏡ごしに愛の篭った熱っぽい視線を向けられると、俺もクラッときちゃいますよ」
「そのようなものは1ミリも込めた覚えはございません」
どちらかといえば冷めた視線だったりする。
最初のコメントを投稿しよう!