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それを落ち着かせるように、イブキが眼鏡のブリッジを上げてから次を促す。
「陽菜、そう慌てないで下さい。まあ、私は反対しませんが、これからどうするつもりですか?」
陽菜は、おどおどしながらも言葉を続けた。
「……それが、困ってるです」
「何を?」
陽菜はイブキと凛を見たり視線を外したりを何度か繰り返す。
「だって……イブキお姉ちゃんも、凛お姉ちゃんも、お兄ちゃんのことが好きだから」
「ぶっ!?」
「……」
陽菜の言葉に凛は吹き出し、イブキは仏頂面のままフリーズ。
「でもでもね、陽菜たちなら、上手くやっていけるんじゃないかなって……」
言葉の途中で、凛が異議を申し立てるようにテーブルを叩いた。
「待て待て待て誰が、あんなロクデナシに惚れるか!」
「違うです?」
「う……違わない……わけでもない……。って、そもそも! 陽菜も雅人なんかのどこがいいんだよ!」
「だって……お兄ちゃんは、優しくて、格好よくて、いつも陽菜たちのことを本気で想ってくれて……。お兄ちゃんといると、ドキドキして、楽しくて、もっと一緒にいたいって思うようになって……だから陽菜は、お兄ちゃんのことが、好きなんだと思うです」
その一切の曇りのない無垢な笑顔は、『恋する乙女』そのものだった。
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