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「うん。イッチャンは頭がいい。そして頭がいい故に幸せになりきれないタイプだね。後先を考えすぎたり、感情にいちいち定義をつけようとしたりするから動けなくなる」
「私だって、何かきっかけでもあれば……」
言って後悔した。
情けないと言うか、下心すぎるというか。
優芽はその大きな目を少し細め、「ノンノン」と否定を込めて人差し指を振る。
「イッチャン、あーしの好きな漫画にもあるけど『等価交換の法則』ってヤツだよ。マー君が日々頑張ってるから、イッチャンはマー君のことを好きになったんじゃないの?だったらイッチャンも頑張らなきゃ、でしょ?」
「う……。そう、ですね」
相変わらず優芽は的確かつ容赦ないことをズバズバ言ってくる。
言葉に詰まるイブキの背中を優芽はパシンとはたいた。
「ほらほら、だったら笑顔っ!」
「ぅえ!? あ、はい。……よし、頑張ります!」
柄にもなく、小さなガッツポーズ。すると優芽も反応してきた。
「うは! イッチャン可愛いなぁ! くぅ……! むぎゅ!」
「ちょっと、優芽、道のど真ん中で抱き着かないで下さい!」
結局、優芽が腰に抱き着いたままで、周囲の生暖かい目を気にしながらよろよろと家まで歩いた。
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