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しかし、『面識がある』程度であるのもまた事実。
「それで、ユフィ、どうして急にここに?」
「ああ、すみません。事情を説明しますと、わたくしはお父様と喧嘩をしてしまいまして……。少し家を離れることにしましたの。プチ家出というのでしたっけ?」
話を聞けば、父親と婚約について揉めたためプチ家出を敢行。
数日匿ってくれる場所を探して西園寺家に来訪。
そして滞在させてもらう代わりにメイドとして働く、ということらしい。
「わたくしも、家を背負う立場というのは分かっておりますの。好きな殿方がいるというわけではありませんが、しかし、人生の伴侶たる方は自分で決めたいと思いますの」
「その気持ちは、わかります」
雅人は神妙な面持ちで頷いた。
その二人を部屋の壁際で見つめるイブキは、眼鏡を光らせながら表情を変えずに、心の中だけで疑念を抱いた。
(家出云々はまあいいとして……それでいきなりこの家にくるのでしょうか。まあ、確かにパーティーのときは社交的な性格が合うのか、二人で親しげに話しておりましたが……)
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