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「ユフィ、キッチンはあちらでございます。御案内いたします」
廊下を歩いて先導するイブキに、後ろからユフィの声がかかる。
「雅人様がイブキさん達に出会い頭にプロポーズをしたのは本当ですか?」
イブキの足がピタリと止まる。
「ええ」
「そして今も、三人のことを好きだと言い続けていると」
「そうですね」
淡々と答えるイブキに、ユフィはやんわりと微笑んだ。
「雅人様は、責任感が強いのですね」
その表情と裏腹に、どこか刺のある言い方。
イブキは『責任感』という言葉に、違和感を持たずにはいられなかった。
「……御主人様は『仕方なく』口説くような方ではありません」
「あら、どうして断言できますの?」
「どうして、って……」
返答に窮するイブキ。
改めて聞かれると、その根拠は、なかった。
「いえ、イブキさんを困らせるつもりはありませんわ。ただ聞いてみただけですの。差し出がましい質問でしたね。申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げるユフィ。
「……」
イブキは、海底の二枚貝のように沈黙するしかなかった。
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