丁重におもてなしをしましょう

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ユフィはたれ目の端をさらに下げて、優しげに三姉妹を見渡しながらスルリと雅人に腕を絡ませる。 「でも、皆さん。ご主人様の要望に応えることが、使用人の使命ではごさいませんか?」 イブキ以上凛未満の胸の膨らみが雅人の腕に押し付けられた。 (や、柔らかっ! そしてこの近さだと髪からいい匂いが……!) 雅人はその至極の喜びをユフィに伝えたいが、もし表情を緩めたら正面で睨んでいる凛に脛を粉砕されかねないため動くに動けない。 「ユフィ、御主人様が困っております。離してあげて下さい。私としては御主人様のことを思うからこそ、当主としての器と矜持を持って頂きたいのです」 「イブキさんは雅人様の何を見ているのですか? こんなにも喜んでおりますのに」 イブキとユフィの視線がぶつかって火花が散る幻覚が見えそうになったあたりで、雅人が遮った。 「ユフィ、今日はここまでな。ありがとう」 「あ……はい。雅人様がそうおっしゃるのでしたら」 柔らかな金髪をそっと撫でると、ユフィはぽっと頬を染めて絡めた腕を解く。 「……金髪碧眼お嬢様メイド……いい! すごくいい! めっちゃ萌える!」 『メイドコスプレの女の子』よりも『職業としてのメイドさん』に萌える雅人としては、新天地開拓の瞬間であった。 「足が滑った! 危ない折れろ!」 「ぉぶぅっ!?」 代償として、凛に脛を蹴られることにはなったが。
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