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沈黙を破るように、ユフィはニコリと屈託のない笑顔を向けた。
「……わかりましたわ」
「え?」
「その素敵な言葉に免じて、わたくしは身を引きます。……昨日は聞けなかった言葉ですからね」
金髪をすっとかき上げて。
「うふふ、やはり恋とはいいものですわね。そうでしょう、イブキさん?」
「……ええ」
ユフィは何かを悟ったような目と口ぶりで話し続ける。
「わたくしも、もう一度恋愛に対して真剣に考えてみますわ。……ちゃんとお父様と話し合って」
「ユフィ……」
「そんなわけで、わたくしは家に帰ろうと思いますの」
『…………え?』
余りに唐突な宣言に、ユフィ以外の四人は目を点にする。
「雅人様、皆さん、お世話になりました」
『は、はあ……』
「では帰り支度をして参ります。失礼します」
『…………』
扉が開いて閉まる音。
遠ざかる足音。
そして台風の後の静けさだけが、部屋に残された。
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