1838人が本棚に入れています
本棚に追加
次、とばかりに陽菜が一歩前に出る。
緊張しているのが見てとれ、両手を合わせてお腹の前あたりでもぞもぞさせていた。
「お兄ちゃん、あのね……」
待ち焦がれていた時が来たと、もう泣きそうな顔でちらちらと雅人の顔を窺って、小さな唇をゆっくり開く。
「陽菜も、お兄ちゃんのことが好き……大好きなの……」
雅人はそんな陽菜を優しく引き寄せて、頭を撫でた。
「ぁ……」
柔らかな髪に手櫛が通り、陽菜から小さく甘い吐息が漏れる。
「俺も、大好きだよ、陽菜ちゃん……」
「あ……ぅ……ふわぁ……陽菜もやっと言えて、嬉しくです……」
頬を染めて、見ている人間まで幸せになるような、幸福そのものと言える笑み。
そしてさっきのように――しかし今度は明確な意志を持って――ぎゅっと雅人に抱き着いた。
「えへへ……大好きですっ、お兄ちゃんっ!」
.
最初のコメントを投稿しよう!