プライベートは大事にしましょう

4/11
前へ
/223ページ
次へ
コンコン。 「ッ!?」 ノックの音が突然に響き、イブキは生命の危機を感じた小動物のごとく跳ね上がる。 「イブキさーん。入っていいですかー?」 (ちょ、ちょっと待って御主人様! 5秒待って!) 刹那、猛烈な勢いでぬいぐるみを毛布の下に隠すが、ぬいぐるみの分な膨らみが不自然だと思い、毛布ごと端によせる。この間2秒。 椅子に座って出迎えたほうが自然であるが、隠したものから離れたくないという心理が働き、結局ベッドに腰掛ける。 そして何事もなかったように返事をした。 「はい。どうぞ」 返事を聞いた雅人は扉を開け、第一声で疑問を投げ掛ける。 「あれ、イブキさんもしかして寝てました? 起こしちゃってすみません」 「い、いえ。大丈夫ですよ」 「……? まあ、それならいいですけど」 本人はごまかせているつもりだろうが、毛布が丸まっていることと表情が固いことに雅人は若干の違和感を覚えていた。しかしイブキが寝ぼけているのだろうと判断。深くは突っ込まず用件を告げる。 「俺の寝巻こっちにきてません?」 「寝巻ですか。ええと……」 パソコンデスクを見ると、たたまれた自分の服に混じって男物のスエットがあるのがわかった。 「ああ、これですね。はいどうぞ」 「どうも~。ありがとう」
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1838人が本棚に入れています
本棚に追加