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風呂場へ向かう途中、曲がり角の向こうで雅人と凛が何か話しているのが聞こえた。
イブキは人が話している所に割り込むのが苦手なため、二人の会話が終わるまで角で待つことにした。
「凛! ちょうどいいところに! お前、俺の寝巻を間違ってイブキさんの部屋に置いてきたろ」
「ああ、わりぃわりぃ」
「だからペナルティとして、凛には俺の背中を流す役目を与えよう」
「は? ちっせぇ男だなァ。むしろ、ねーさんに会いに行く口実ができてよかったんじゃねぇの?」
「なるほど! そういう考え方もあったか!」
「だろう?」
「それでは代わりに、褒美として俺が全身全霊で凛の体を洗って差し上げよう」
「風呂に沈めてやろうか? 極楽気分を味わえるぞ?」
コントのようなやり取りを交わす雅人と凛に、イブキは我が子の成長を見守る母親のように目を細めて、壁に背中を預ける。
(……二人は相変わらず仲いいですねぇ……。でも、なんだか……)
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