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予想外の出来事に対して、イブキは動揺を努めて隠す。
「御主人様、朝の時間は限られております。朝食に参りましょう」
「え、そんなフラフラのまま一人で準備したの?」
そんなに酷い状態に見えるのか、とイブキは思った。体調の悪さを隠しきれていないことがむしろ悔しい。
「はい。私の、仕事ですから」
「気持ちは嬉しいよ、イブキさん。ありがとう。でも、無理はしないで下さいね」
「慣れてますから」
「そういう問題じゃないくて……とりあえず部屋出ましょう」
雅人はイブキの背後から両肩を押して一緒に退室する。
「イブキさん、ご飯は食べられそうですか?」
「あ、いえ、食欲がわきませんので、登校まではお時間頂こうかと」
「さすがに今日は学校休んだらどう?」
「行けます」
二人で押し問答をしながら部屋を出たところで、のろのろとダイニングに向かう凛と陽菜が見えたので、雅人はその背中に声をかけた。
「凛! 陽菜ちゃん!」
それに反応して、寝起き最悪コンビ(命名・イブキ)はゆっくりと雅人のほうに振り向く。
「んだよ朝から……」
「凛さんよ、そんな反抗期真っ最中の男子中学生みたいな態度を返されると、俺も若干傷つくんだが?」
一方、低血圧の陽菜はほとんど脳波が停止したような顔で口から音声を発した。
「ぉはよぅでふ……ぉにーちゃ……」
「おおぅ! 陽菜ちゃんの寝起きかわええ! ……は、今は置いといて。なんか、イブキさんが風邪っぽくてさ」
「いえ本当に、大丈夫、ですから」
イブキは詰まった声で強がるが、その様子を見た凛が欠伸をしながら意見する。
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