体調管理はしっかりしましょう

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家に残ろうかという雅人の提案は当然却下され、三人で登校する。 校門――とはいえ無駄に敷地面積を誇るこの学校では門から校舎までは徒歩3分の距離――で、生き物のようにポニーテールを揺らす優芽に出会えた。 自作の染毛剤で染めたピンク頭は遠くからでも目立つ。 「優芽さん、おはようございます」 「ちーっす、先輩」 「おはようです、優芽さん」 「やあやあ皆おはよーさん。およよ? イッチャンは?」 「イブキさんは風邪でお休みです」 「なるほどなるほど。マー君がイッチャンに、恋の病を患わせたわけですな?」 「はっはっは―。優芽さん、それはもっと前からですよ?」 「……アンタら二人は一生風邪引かなそうだよな」 アメリカのコメディドラマのようなハイテンションな会話に、凛がツインテールを左右に振りながら、そうボソッと呟いた。 凛はその豊満な胸の前で腕組みしながら「それにしても」と、いつもより弱めの声。 「体調崩したのは、あたしらがねーさんに頼り過ぎたせいで疲れが溜まってた、てのもあるかもな。今日はきつく当たっちまったし……」 それに陽菜も賛同する。 「うん……そうだね。毎朝とか特に、イブキお姉ちゃんに任せっきりだもんね」 ちょっと湿っぽい雰囲気になったところで、優芽がパンと、一本締めのように手を叩いた。 「ほらほら。反省は深く短く! ね、ガッコ終わったらさ、あーしもお見舞いに行っていいかい? ちなみに2年生は今日は6時間目までだねっ」 「えと、陽菜は今日の当番ですので、買い物に行っておきたいです」 「あたしと雅人は5時間目までだな。今日は先に帰らせてもらうぞ」 「凛は委員会じゃなかったか? 体育祭実行委員」 「ああ、そうだった!」 この学園では一学期に体育祭、二学期に文化祭があり、体育祭は梅雨真っ只中に無理矢理開催したりする。 凛がジャンケンに負けてなった実行委員とは名ばかりで、一年生がすることは結局は雑用だ。
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