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「ですが……体調管理もできないとは、メイド失格ですね。心配させてしまいました」
「いえ、イブキさんは、しっかりやってくれてますよ」
しかしイブキは、白い天井を見つめたまま自嘲気味に笑う。
「昨日、雨に降られた時点で、こうなるかもと予測がたったはずでしたのに、たかをくくって、結果、風邪を引いてしまいました。やはり私は、ダメなメイドなんで、フ!?」
「おおー、イブキさんのほっぺ、すべすべで、むにむにしてますねー」
唐突に雅人が、イブキの両頬をみにょーんと引っ張ってきた。
「あにふるんでふかごひゅじんはま!?(何するんですか御主人様!?)」
「失格とか、ダメとか、誰が決めるんですか。少なくとも俺はそう思いませんよ。……ですから、笑って下さい」
イブキの頬を無理矢理引き上げて笑ったような顔にしたあと、そっと離す。
「暗い気分でいたら、治るものも治りませんよ。イブキさん」
「笑う、ですか?」
イブキは少し困ったような顔で、ぎこちなく自分の手で口角を上げる。
雅人にはそれが、妙に微笑ましく見えた。
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