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「イブキさんは、人一倍頑張ってるじゃないですか。もっと自信持って下さい」
イブキは目線を逸らしたまま自分の頬を撫でる。
「しかし、私はまだ、力不足です……」
「それでも、いいんですよ」
「え……?」
小鳥がさえずるような小さな音量で、疑問の声を発した。
雅人は、なんとかイブキに元気になって貰いたいと思った。
大好きな人が頑張っているんだから報われて欲しいと、素直に願った。
「イブキさんがもし、力不足だと感じたり、今日みたく辛かったりしたら、誰かを頼ってもいいと思いますよ。ここには凛もいて、陽菜ちゃんもいて、もちろん俺にも頼らせて下さいよ。……もし周りの人を頼ったからって、俺はイブキさんを駄目な人間だとは、絶対に思いませんよ」
イブキは驚いて目を見開くも、すぐに瞼が下がり伏し目になる。
「それでも……私の勝手で、迷惑をかけるわけにはいきません」
「迷惑だなんて思わない。むしろ遠慮なく頼って欲しい」
雅人はイブキの手を取る。
女の子の肌の、柔らかくて滑らかな感触。
体温、汗の湿り気、微かに感じる手指の脈動。
決して壊さないように、両手でそっと大事に包みこむ。
「だって、イブキさんはメイドである以前に、俺にとって大切な女の子なんです。イブキさんが一人で辛い思いをするのは、見ていられません」
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