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雅人はイブキをじっと見て、一呼吸置いてから、ゆったりとした声で答える。
「俺は、しっかり者のイブキさんも、今のイブキさんも、全部引っくるめて大好きですよ」
「……は、恥ずかしいですよ」
照れ隠しに眼鏡をいじろうとして、顔にないことに気づく。
手は眉間をなぞるだけ。
手が役割を失い、顔の前の何もない空間をさ迷う。
雅人はその光景に、口元に思わず笑みが零れた。
「そうやって恥ずかしがるイブキさんも、可愛いと思いますし」
「な……っ!」
不意打ち気味に言われた雅人の言葉に、イブキは所在無げだった手をグーにして、シーツをぼふぼふしながら抗議する。
「で・す・か・ら! 気軽に『可愛い』なんて言わないで下さい!」
「……っ! ふおぉおおぉおぉっ! はい、萌えさせて頂きましたぁ―っ! イブキさん、その仕草はズルイで
すってーっ!」
「い、いい加減にして下さい!」
雅人はオーバーリアクションしつつ、ある仮説に辿り着いた。
イブキは、『綺麗』と言われることはあっても、『可愛い』とは言われ慣れていないんじゃないか、と。
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