体調管理はしっかりしましょう

25/27
前へ
/223ページ
次へ
「というわけでイブキさん、もう一度触らせて下さい」 「何が『というわけで』なのかはわかりかねますが、お断りします」 イブキの頬に向かってゆらぁりと伸びてくる雅人の両手。 イブキはその手首をうっ血させるぐらいの力で掴んで押し止める。 「でもイブキさんだって、まんざらでもないって顔してましたよ」 「…………。……そ、そんなこと、ありませんって」 少し口を尖らせて、ぷいと顔を斜め下に向けるイブキ。 「ああもうホンット可愛いなぁ! ふっふっふ、イブキさん、俺の前ではそんな強がらなくても――」 ガチャ。 突如物音がして、二人が一瞬跳ねてからその音源を見ると、部屋の扉の開く音であったと気付く。 「ただいまー。ねーさん元…………気………?」 帰宅した凛が学生服姿で入室。 そして、二人の光景を見て凛の言語中枢がストップ。 「……」 「……」 「……」 雅人は妙に冷静になって、今の光景を客観的に分析してみた。 まず雅人は、怪しい笑みを浮かべて身を乗り出し、両手でイブキの顔を掴もうとしている。 一方のイブキは、顔を真っ赤にして、雅人の両手首を掴んでなにやら抵抗している。 結論。 どう考えても凛からは、『イブキを無理矢理押し倒そうとする雅人』と『嫌がるイブキ』にしか見えないわけで。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1838人が本棚に入れています
本棚に追加