紅茶派の陽菜と、コーヒー派の凛と、緑茶派のイブキ。

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イブキの体調が戻ってから数日。 西園寺家のリビングには2人掛けのソファーがテーブルを挟んで2つあり、雅人と三姉妹はいつも夕食後にそこでテレビを見ながらくつろぐことにしている。 雅人が先に座ってクイズ番組を眺めていると、銀のお盆に紅茶のカップを二つ乗せた陽菜がてちてちと歩いてきた。 雅人の網膜に映るのは、ちんまりとした背丈、フリフリの改造メイド服、ふわふわの赤茶髪。そしてその微笑みはまるで地上に舞い降りた天使。 「お兄ちゃん、お紅茶持ってきたですっ」 「くぁぁぉおぅ……! むしろ陽菜ちゃんをデザートに食べちゃいたい!」 「へ?」 口をポカンと空けて、ちょっと首を傾げているのがまた愛らしい。 「はっ……! つい本音が。……うん、紅茶ありがと。陽菜ちゃん」 えへへ、と陽菜は蒲公英のような笑みを浮かべてから、定位置である雅人の左斜め前の席にちょこんと座る。 『いただきまーす』 そして二人で紅茶をふぅふうと冷ましながら飲み始めた。 「ふぅ……。陽菜ちゃんがいれた紅茶って美味しいよね」 「もう、お兄ちゃんってば……ティーパックのお紅茶だから、誰がいれても一緒だよ?」 陽菜はニーソックスに包まれた膝小僧をギュッと合わせて恥じらう。 「いや、絶対美味しいって」 「うん……そう言ってもらえると、嬉しいです」 雅人に感謝の意を伝えてから、陽菜はカップを両手にもって、はにかみながら口の中だけで言葉を紡いだ。 「……陽菜も……お兄ちゃんと一緒に飲むお紅茶は、美味しいです」 「うん? なにか言った?」 「あ、い、いえ……なんでも、ないです……」 手をぶんぶんと振ってがら、また視線を下に落とす。
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