紅茶派の陽菜と、コーヒー派の凛と、緑茶派のイブキ。

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一方、急須と湯呑みの乗ったお盆を持ったイブキは、軽く一礼してから雅人の向かいの席に座る。その動作とカッチリと着込んだロングスカートのメイド服がよく似合っていた。 「失礼いたします」 無駄な力の入っていない背筋を伸ばした綺麗な座位姿勢で、いつも通り無表情ではあるが、雅人を見るその眼鏡越しの瞳からは言い知れぬプレッシャーが放たれていた。 全員が着席したが、凛の『口撃』を受けた雅人は、まだちょっと傷が塞がってなかった。 「いいさ、今はツンでもいいさ……デレのパーセンテージが下がるほど、デレたときの破壊力が増すものなのさ……」 雅人の呟きに対して、凛がブラックコーヒーをすすってから、どうでも良さそうな口調で答える。 「別にあたし、雅人のこと嫌いってわけでもねぇけど」 「そ、そうなのか!?」 「ああ、あたしは雅人のこと大切に思ってるぜ…………サンドバックとして」 「『友達として』ですらないのか!? せめて有機物扱いしてくれ!」 「ええ〓。『生けるサンドバック』とか、かっこよくね?」 「なんだその『生ける伝説』みたいなノリ! それっぽい前置詞付ければいいってもんじゃねえぞ!」 「『生ける雅人』」 「え、俺、本来死んでたの? アンデットなの?」 「『活ける雅人』」 「刺身!?」 「いや、剣山に刺す方」 「花と一緒に活けられちゃうのもお断りだぁぁぁ!」
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