流刑惑星の事件

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「見ての通り、食用の宇宙虫さ。自給自足のためにはやむをえなかったんだ。最初は死体だけ与えていたんだが……」 「そのうち殺して餌にするようになったわけか。ひどいことを……」 「ばれちゃしかたない」  老人は撃たれていない左手でナイフを拾うと、男に襲いかかってきた。 「やめろ」  調査員はヒートガンを撃った。 「どうせ私は終身刑さ。どうせ死ぬのなら、美味いものを食っていたかった……」  倒れた老人は最期にそう言って絶命した。  調査員は携帯端末を操作して、短く言った。 「こちら304号。事件は解決。収容を要請する。詳細はおって報告する」  スイッチを切り、「美味いものか……」とつぶやくと、うごめく宇宙虫を眺めた。 〈終〉
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