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「!」
グリムが目を見開いて、それを避けようと後退する。だがその僅かな動揺という隙を見逃すことなく、ジップコードの鞭はまるで蔦の如く、グリムの体を縛り付けていく。
絡みついてくる鞭を引き剥がそうとグリムは腕を動かすが、余程強い力で縛り付けられているのだろう。殆ど動いていない。
「グリム!?」
雅が叫んで、駆け出しそうになる。だが雅の声を聞いたグリムが、此方を鋭い眼光でみた。
「来るな!」
雅がしようとしていることを悟ったのであろう彼は、雅を事前に制したのだ。厳しい声で言われた雅が、思わず足を止めた、その時。
「っ!」
ジップコードが、グリムの首を掴み、彼の腹部を思い切り蹴り付けた。一体どれくらいの力で蹴られたのだろう、グリムの口から血が溢れた。喉をせり上がってくる血を吐き出そうとしている彼だが、それを阻むようにジップコードは、首を強く押さえつけた。
「どうしたさ? これでもう終わりかぁ?」
「グリム!!」
見ていられない。その後もグリムの体に強打を加えるジップコードを止めようと、雅が再び走り出そうとした。
「浅磨落ち着け!」
だが、雅の勢いは、神室の手に掴まれることによって削がれた。
「神室君離して! グリムを助けないと……!」
雅は神室の手を解こうと、暴れる。耳に届いてくるジップコードの高笑いと、グリムの殺した呻き声が痛々しくて、辛い。
「助けるって、あれを切るつもりか!? 【童話の再現】でも切れない鞭を、お前が切れるわけがないだろう!」
神室の言葉に、雅は唇を噛む。そんなことは、わかっているのだ。だが、このまま放っておくわけにはいかない。
彼が来てくれたこの数日、私は楽しかった。彼が居てくれたという、それだけで嬉しかったんだ。
だから私は、恩返しがしたい。こんな所で、あんなやつに殺されて良い人物だとは思わないから……!!
「雅、虚村の言う通り。私や虚村にだって、ジップコード様は止められない。幾ら大罪人と罵られる【12番目】であろうと、所詮はグリムリーバー……堕天使様に敵うことは、ない」
紅罪の言葉に、雅だけではなく、神室も傷ついた様子。いや……傷ついたと言うより、憎々しげ、と言った方が正しいのだろうか。その顔を見て、雅は思い出す。
「さっき私が殺されそうになったときは逆らってくれただろ! 神室君……お願いだ、グリムのことも助けてよ!」
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