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「べ、別にそんな大層なことじゃ……そんな直ぐに抜けるって言われて、そもそも疑問を持たない方がおかしいし」
本当に紅罪が【12番目】となっていたなら、機密情報を持っている彼女は真っ先に襲われるべきだ。例え神室が標的になっていたのだとしても、紅罪も標的として含まれるべき。
なのに、絶花は紅罪が【邪魔】をするからこそ殺すのだと言う主張だった。それはつまり、邪魔さえしなければ手を出さないと言うこと。
故に見抜けたのだよ、と言うことを口にしようとしたその時。
「ただ他人に無関心なやつだと思いこんでいたが……もっと恐ろしいやつだったな」
「……」
今度は、雅が黙り込む番だった。
紅罪は顔をあげ、雅を見詰めてくる。
「お前の適応力。私にはそれがどうやって発揮されているものか不思議で仕方なくて、考えていたんだ。可能性は幾つかあった。一つ目はお前が疑問を感じない馬鹿だという可能性。二つ目は、お前が本当は色々知っているのに、黙っている可能性。三つ目は、凄まじい知能の持ち主で、全てを見切れてしまう可能性」
紅罪はそこで言葉を切った。彼女は、そのいずれでもないと考えているようだ。
「私の最有力な考え方は、お前が【無関心】だと言うことだった。とは言えお前はホラーハイズのことに対するとかなり関心を抱いていたから、これもまた微妙だったんだが……あまり人に興味を持たないタイプなんだと思っていたよ。でも、これも違った」
紅罪は雅をスカイブルーの双眸で捕らえたまま、再び口を噤む。そして、一度雅から目を逸らすと、再び意を決したように見上げてきた。
「お前にとって世界とは……人とは、【枠】の外の存在なんだな」
【枠】。
……なるほど、そう言うことか。紅罪の言葉に、雅は頷きも否定もしなかった。取り敢えず思ったのは、こんな状況では気を張り巡らせ続けはできなかったんだな、と言う、自分への呆れ。
「枠……そんな風に考えたことはないけど、確かに、私はかなり客観的に物事を見てると思う。だから物事の矛盾にも気付きやすい。だけど、無関心ではないよ? 関心を持っているからこそ、【見て】るんだから」
「はは。まるで監視者だな、お前は」
紅罪の言葉に、雅は苦笑いして頬を掻くしかなかった。けれど、紅罪の追撃はそこでは終わらなかった。
「お前は……そうやって、【自分】も管理してるんだな」
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