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「ふ、本当に凄いなお前は! 他には私のことで何が分かってる?」
まるで自分のことを言い当てられたのが楽しい、とでも言いたげな紅罪の様子に、雅は一瞬面食らう。先程までは、それに対して怯えている節さえあったのに。
「え。えーと……取り敢えず、紅罪は体が弱い、ってことであってるな? そこからいくと、そもそもどうして紅罪が【処刑執行者】に入ったのか、って疑問が出てくるんだ。さっきの推測からすると、スパイに任命されるのは、あまり【体】的に有能じゃない人」
あくまでも【体】的にね、と付け加えながら、雅は続けた。
「紅罪の体が弱い可能性として考えられるのは、生まれ付き体が弱いか、途中から弱くなってしまったか。紅罪の戦い方を見てると、自分の力の行使に迷いを感じない。つまり、紅罪にとって今の状態は【正常】なんだ。だとすると、体が弱いのは生まれ付きか、それとも本当に小さい頃何かあったか」
雅がそう言って目を向けたのは、紅罪の全身に巻かれている包帯。あれが何かの鍵を握ると思ったからだ。
「【何】が紅罪の体を弱くさせたのかは分からないけど……でも、少なくとも紅罪は、【処刑執行者】としてやっていく実力は無かったはずだ。なのに、【処刑執行者】にいる。とすると、紅罪の家族は相当、強い権力を持っているのかなって」
「あぁ。私の家────【是堂】は、貴族の一つだ。尤も娘が邪魔者だからと、【処刑執行者】に押しつける体たらくの家だがな」
貴族。その言葉で雅は、なるほどなぁ、と思った。
「でも、言って紅罪も【家】のことを嫌ってはいないんじゃないか? きっと、大切にしてる方だと思うんだけど」
「私が、家を……? 何を言う、私を捨てた家だぞ」
大切に思えるか。紅罪はそう、呟いた。
けれど雅は、紅罪の言葉に強く首を振る。彼女が家族を大事に思っている、そう思った理由はきちんと存在していたからだ。
「だったらなんで【小細工】ばっかりなんだよ。いくら体が弱いからって、スパイを続ければ【処刑執行者】の中核にまで関わるような情報を持てるはずだ。私のさっき言った【有能】って言うのは、【体】的な話。どれくらいを知能が高いと言うかは分からないけど、少なくとも紅罪は【スパイ】としては【有能】なはずだよ?」
「私が優秀? そんな風に思ったことは一度もないぞ。私の一体何が有能なんだ、言っておくが知能は高くないぞ」
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