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つまり、信頼が高くなればそれだけグリムリーバーも人間も強い力を使えるが、人間側は命を更に削られてしまう、と言うことか。
「お前が先程ホラーハイズに魔術を使われ、苦痛に襲われたのは、信頼が薄いのに強い【毒】を使ったから、拒絶が働いたんだ。それにもかかわらず強引にとられたせいで、反発が強まり、辛かったんだろう」
「なるほどな……私としては拒絶してるつもりはなかったんだけど、無意識のうちに拒絶しちゃうんだな」
雅が言うと、紅罪はあぁ、と頷いた。
「無条件に相手に全てを渡せる人物など、それは主体が全くないような人間だけ。そんなやつはそもそも、居ないだろう? と言うわけで、契約を行う際にはグリムリーバー側の精神を相手に一部明け渡すんだ。即ち、【思い出】を共有する。本来はグリムリーバー側がどれだけその相手を信頼するか考え、その量を調整するんだが……」
「今の神室にそんな力はない……ってこと、だよな?」
雅が言うと、紅罪が頷く。
「虚村とホラーハイズ、どちらの記憶がどれくらい入り込んでくるか、正直分からない。特に虚村……あいつの全てを受け止める覚悟はあるか?」
「……」
神室の過去を、受け止める。私にその度胸はあるんだろうか。
話を聞いた時に握った、神室の手の感触を思い出す。一人で抱えているのだろうその思いを、一緒に抱えていくことが出来るなら……。
「受け止められる。……って、強くは言えないけど。でも、私は一緒に背負って行きたい。その、思いはきちんとあるよ」
雅の言葉に、紅罪は頷いた。
「分かった。では、始めよう。いいか、自分を見失うなよ。お前は浅磨雅。忘れるな、全ては記憶……お前が実際に経験する訳じゃない」
紅罪が強く念を押すように、そう言った。自分であることを忘れるな────つまり、神室やグリムの記憶に強く感化されてしまうかも知れない、と言うことだろう。
「今から扉を開く。扉が開くと、お前の精神と虚村の精神、そしてホラーハイズの精神が一時的に同化する。私で出来る限りは抑制しようと思うが、しっかりな」
「うん」
雅が頷くと、紅罪は雅と神室の足下に手をついた。文字が白銀色に輝き、光っていく。
文字が床に浸透した直後、白銀の炎が扉の形となりなぞっていく。雅と神室の間に一本の線が入り、青銅の扉が姿を現した。茨によって覆われているその扉は、固く閉じられている。
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